PSAについて
(前立腺特異抗原)
 

成人男性の正常のPSAの血中濃度は0.5-3.0ng/ml(年齢により基準値が少し変化します)  

PSAとは前立腺から分泌されるタンパク質の一種です。
従って前立腺が大きいほど血中の分泌量は多くなりますが、癌・炎症・刺激でさらに多くの量が分泌されます。
前立腺癌で転移がある場合は、転移した細胞からもかなりの量が分泌されますので、
PSAは数十−数千 ng/mlといった桁違いの高値をとることが多くなります。

女性や、前立腺を手術で摘出して癌の再発がない場合は、測定不応の低値( <0.01 といった値で示されます)となります。

前立腺癌は最近増加の一途をたどっており、50歳以上の男性を始め国民全体が関心を持つ様になってきた病気です。
それと共に、診断のきっかけとなるPSAもこの数年で脚光を浴びてきました。

PSAの特徴を以下に示します。


@癌の早期発見が採血だけで出来る
採血で癌を診断する検査項目(腫瘍マーカー)は他にCEA(大腸癌)、AFP(肝臓癌)など幾つかあります。
これらは比較的進んでから(進行癌)上昇するものが多いと言われています。
それに対し、PSAは治癒可能な早期癌から上昇する点で、早期発見に非常に有用です。

A癌でなくても上昇することがある
「早期発見」につながる検査は裏を返せば、癌でない状態でも高い数値になる(偽陽性)事が多いということです。

PSAが偽陽性になりやすい状態
・前立腺が大きい場合(当院での超音波検査でサイズを計測できます)
・前立腺炎がある場合→排尿時痛、発熱などの症状があります。検尿にて尿中に膿(白血球)、細菌を認めます。
・尿道カテーテルを挿入した場合
・残尿が多い場合
・年齢とともに自然にPSA値が上昇します→高齢になるに従って基準値が上がります。

これらの場合は偽陽性である事も考えられ、PSA採血の他に、専門医による問診と超音波・検尿等の検査で
総合的に癌の可能性が高いか判断することが必要です。

以上より前立腺癌が疑われる場合、最終的に前立腺生検(針で組織をとって診断する)をお勧めすることになります。

B前立腺癌の治療効果を判定する検査として優秀
前立腺癌の治療(手術、放射線、投薬)した場合は、癌細胞の増減によってPSAの値も変化します。
PSAが減少したり測定不応な0に近い数値になっている場合は治療が奏功していると考えられます。


オーストリアのチロル地方でPSA健診を始めたところ、癌の早期発見、死亡率が低下したという報告があります。
我が国でもPSAを健康診断や人間ドックで積極的に実施され始めており、チロル地方と同様の成果が期待されています。